それは、一通の手紙から始まった。
数年前に養父を亡くした衛宮士郎は、広大な邸宅に独りで生活している。
時折、隣家から遊びに来る人を除けば尋ねる者も少ない。
静か過ぎる生活。
まるで家を敬遠するように朝から晩まで弓道とアルバイトに打ち込んでいた。
士郎のもとに手紙が届いたのは年明け間もない頃。
穂群原学園とネームの入った大判封筒には、学校案内とスポーツ特待の勧誘書類が入っていた。
全寮制で文武両道を掲げる名門校は、それだけに門戸が狭い。
不可解な噂を聞きつけた隣家の人々の反対を押し切り、編入を決めた士郎は少ない荷物一つを持って家を発つ。
伴う者はない。
ただ一人、残酷な箱庭に呑みこまれる。
待ちうける過酷な運命に、耐えきれるか───。